トルコブルーの女

今日は風も日射しも強い。サンリブ北口の表にトルコブルーの色をしたカーデガンの女性、年齢は20代半ばくらいだろうか。肩には革性のバックをかけて、反対の手にはコンビニ袋。袋の中身は雑誌でBRUTUSの文字が透けて見えている。

不安定な様子でカバンの中から携帯を取り出すと、女、慌てた仕種でディスプレイに目をやり、店に入ろうと足早に歩いて来る。サンリブ若い女性店員は入口の近くで「いらっしゃいませー」とにこやかに客を招き入れている。

トルコブルーの女性、その店員に気をとられたのか、それとも携帯ストラップがもたつくのに注意力が散漫になっていたのか、足元の段差に気付かず思いっきり転倒!! ビッターン!という音がして、BRUTUSを下敷きに、転倒女、たいへん動揺した表情。店員もびっくりして、「大丈夫ですか!?危ないですね、大丈夫ですか!?」と、中腰のまま、段差と倒れた女性を交互に見比べている。「大丈夫です…」。恥ずかしさのため薄笑いを浮かべながら、起き上がるトルコブルーの女性。BRUTUSの表紙はどうやらグチャグチャ。ヒザを見やってジーンズが無事なのを確認すると、転倒女そそくさとその場を逃げるように去っていった。

ふと右手に目をやると、薬指から血が出ている。とっさに拳を作って地面についてしまったのか、第二関節の甲側が斜めにパックリ切れている。トイレへ入り、洗面場で洗い、バックから絆創膏を出すと、不器用そうに患部に巻き付けた。その場で、血が思ったよりもたくさん滲むのを、うんざりした顔でじっと眺めている。トイレを出ると、フードコートをぐるっと一周し、結局トイレ横のマクドナルドで注文。

傷を下に向けるとうずくのか、右手をずっと顔のすぐ横に掲げている。セットメニューの乗ったトレーを痛まない左手で受け取ると、手近な席へ運ぶ。左手でハンバーガ−を食べ、左手でストローをさし、左手でポテトをつまみ、左手でBRUTUSを読む。