敦―山月記・名人伝―

北九州芸術劇場にて。


山月記』の李徴役・万作さんは、虎というより、老狐の趣き。轟き呻く傲慢さは、李徴よりももっと萎びて、いっそう侘びしい。どうしても原作のイメージで観てしまうので、その点では違和感。
一方、喜劇の『名人伝』の方は、狂言人たちの本領発揮だったと思う。
才能ある自分の人生を謳歌し、目指す地平へ猛進し、頂点に手をかけ、そこでいきなり虚数を見い出してしまったような。プラスマイナスが入れ替わってしまい、プラスでもマイナスでも別に変わらなくなってしまい…。
そうゆう話を喜劇で見せるのって計算高いと思った。笑いの裏の底のない奈落。しかも、その奈落は哀しさや空しさばかりじゃなくて、もっとふくよかなものすらたたえているという…。


去年版の、他人様のレポ。