黒猫

友人と三人、自転車に乗って、芝居を観に行こうとしていた。走っているのは細い歩道。走っている私たちから見ると、右側には、コンクリートで固められた急な斜面。左側には、歩道と車道との間に植えられた、ツツジの形の葉の低木。風景は全体的に、ゴッホように奇妙な遠近感。観察者である私には、左右これとは反対に見えていた。
自転車に乗る私たちは、見通しの悪い、ゆるい弧を描いた道にさしかかった。そこには、まるでミニチュアのようにバランスをデフォルメされた、矮小な歩道橋がかかっている。橋の下には、折り畳まれたふうに窮屈な格好で、血の流れる少女が倒れていた。私は自転車をとめる。気づくとふたりの友人は、もうカーブの先へ行ってしまって見えない。ここらへんから、左右反転の観察者である私の視点はどこかへ行ってしまい、私は私だけになっていた。もう一度少女の方、左側へ顔を向ける。ツツジの合間をぬって車道に入った私は、少女を引き起こし、歩道へ連れ出す。ぐったり重たく芯を無くした少女は、頭と足首から出血している。
たまたま通りかかった大人の男性に、助けを求めようと口を開きかけたところで、私は気づく。私は子供で、少女は黒猫。血濡れで死んでしまった黒猫を、助けてくれと頼むことが出来ずに、私は男性が通り過ぎるのを、じっと黙って見おくった。


という夢を見た。




7日に読んだ『英仏百年戦争』、ドイツ30年戦争と同じく、前史が面白かったので、そのメモを以下に。