『宇宙クジラ』


背中の痛みは焼けどの熱のよう。6000度の太陽、10000度のシリウス。焦げる臭気も凍り付く宇宙空間で、痙攣しながらイヤイヤイヤと駄々をこねる少年。いやいやいや、そんなふうに目をそらしてはイヤ。いやいやいや、簡単に言葉を持つのはイヤ。


落ちた反動で跳ね上がる。腰から下が無いケモノ。揺するとほうけて目を開ける。薄らぼんやり光がはぜる。硝子玉つきぬける光子の痛み、脳みそゼリーが悲鳴をあげる。いやいやいや、目をそらしてはイヤ。いやいやいや、見てくれなきゃいや。あなたの事が大好きだもの。ホットケーキを焼きましょう。とろけるバター。シロップ。フォーク。紅茶にザラメ。スプーンの先には、見覚えのある、ほの青い炎がヌラリヌラリ。


クジラ模様の腹の中、石を切り出す大きな男。御影石、大理石。おぶったおもしが背中を苦しめる。6000度の太陽、10000度のシリウス。あなたの事が大好きだもの。ホットケーキを焼きましょう。