創作

『星と種』

襲うんだ、教われるんだ、遅生んだ 変換昨日は、帰納は、脳波。 だから言ったんし、うわごと、と、と、と。 気づけば花も終わり、目見えない汚濁とあいまみえる。 忘れれば時終わり、急激にしぼむ脊髄よ。 襲うんだ、襲われるんだ、襲うんだ、と、 ある星の…

『わたしの国』

さよならがわたしの宝物よ わたしがあんたを愛したら きっといびつにいびつになるわ わたしの国 わたしの街 わたしの家 とまらないから寝られないわ

『青』

あー、女の子の簡単なる態度。知りたくなるのは、何? あー、女の子の類いまれなる美貌。散りたくなるのは、何? 老身、丈みじかくて、あー、細り行く、血。 痩せかけた、ためらい、あー、傷つけて、恥かいて。 逃げおーせると、思ったからさ、わたくしたち…

『災いは『可』である』

生徒達は、驚くほど生気のない顔でこちらを見ていた。 私はその暗い洞穴のどれかを捕まえようと、頼りになりそうな視線を探した。しかし、すがろうとする私の動揺を感じるやいなや、どの顔も不安気に、あるいは怪訝気に震え、せっかく繋がりかけた私とのライ…

『咳』

私はある時、咳だった。 私はある時、激しい呼気であり、振動であり、衝動であり、破裂であり、飛沫であった。 炎症であり、せり上がりであり、苦痛であり、痛みであった。 途上であり、進化であり、経過であり、解放であった。

『嵐』

あああああたまグルグルググル。道を行けば道がなくなる。水をゆけば水が出なくなる。嵐はやってきた。ああやってきた。おそらく暴行に耐えかねて、風の暴力に耐えかねて、あの女どもは疲れ果て歩く。歩き、歩き、しぼむ。ああこんな所に答えが落ちていた。…

『宇宙クジラ』

背中の痛みは焼けどの熱のよう。6000度の太陽、10000度のシリウス。焦げる臭気も凍り付く宇宙空間で、痙攣しながらイヤイヤイヤと駄々をこねる少年。いやいやいや、そんなふうに目をそらしてはイヤ。いやいやいや、簡単に言葉を持つのはイヤ。 落ちた反動で…

『呼ぶ声』

呼ぶ声が聞こえて振り返る。呼んでたあなたがもういない。呼ぶ声が聞こえて振り返る。呼ばれたワタシがもういない。呼ばれた余韻がもういない。呼ばれた事実ももういない。呼んだ声帯喰ったから。呼ばれた脳を消したから。呼ぶ声聞こえて振り返る。呼ぶ声聞…

『音楽』

絶え間なく情熱的な音楽が鳴り響いている。みんな、働き蜂みたいだ。誰かに指示されているらしい。その誰かは見えないけれど。 憤ったり哀しんでみたり、みんな何かと忙しい。リズムにのって生きていくために、なるべく単調を避けたいってさ。黒白グレイのモ…

『モンステラ』

新しく開いた唇が泣いて泣いて止まない。したたる水気にそっと手を触れ、乾いてみないか頼んでみる。重さをはかって、熱さをはかって、世界の秘密を数字であらわす。棒グラフ。線グラフ。円グラフ。レーダーチャート。大人しいあの子犬に、何をしでかしたか…

『たびたび』

私は何万回も生まれて死んできたのに 死ぬたび、いつも哀しくて苦しい。

『おやすみなさい』

私達は、一日に一度、死体のようになる。 私達はいつかかならず死体になる。 死ぬという経験以前に、存在として死体になるんだなぁということを考えている。 死ぬ私と、死体になる私は違うもの。

『今も』

この一瞬ごとに、世界は弾け飛び崩壊する。 泡のようになだれ打って、いくつもの次元が消えていく。

『ゼンマイ島』

優れた怪盗、怪しげなおべべ。みすぼらしい花環、立ちん坊のこより。お祭り騒ぎの渦巻きの片隅。私は団子を頬張って立ち尽くす。見上げた空から降って来る楽しげなゼンマイ鳥。赤い赤い赤いお日さまは細くなって、もうけぇるとゆ。砂ぼこりはビードロのヘリ…

『狐』

火を吹く戦闘機に乗って トワをたゆたう狐憑き

『射抜く』

なるほど、しばらく誰とも喋らないと、私と話すことで、どこかの誰かが本当の私を正しく射抜いてくれる筈だ、という思い込みを抱えてしまうな。射抜く? 違う違う、先に、見抜く、だ。見抜いた後で、私に伝えてくれる。私とはこうゆう人間だ、と。言葉で射抜…

『いびつな○』

ぼくのサンカクと きみのマル 違う形が かなしくて ぼくのサンカク きみになりたくて せめて いびつなマルに いびつなマルに

『愛の噺』

愛の噺はもうしない。飽きが来るのが早い。足が速い。足が臭い。アンドロメダ。アンタ駄目ダ。トーサン夜泣きで困ったナー。シクシクとうるさい。シメシメと泣く蝉。これは夏のお唄ダ。ヴァニラ色の夕焼け。ニラレヴァの生焼け。ご紹介に預かりましたアンタ…

『いんちき魔術』

ハンコをもらって離れがたい。いんちき宗教人に花が咲く。花が咲く。あすこの丘へ登りかけ、こちらの海で溺れかけ、いんちき運転手に握手をしましょう。しましょう。うわの空で吐き出す言葉。薄い爪がカミソリのようで、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめん…

『黒氷』

黒い氷の表面で、つるつる滑稽に滑っているのを、いい加減もうやめにしたい。こけて倒れたまま、かなたまで擦られゆく。あの、日の出の地点まで、かつぶしのごとく、削られゆく。よい出汁が出て、なみだ、はなじるのような、うまい液体になって、私は、じき…